osiris

金村修写真集『SPIDER'S STRATEGY』

品切れ

発行:2001年1月25日

総頁数:102頁(写真点数=ダブルトーン80点)
体裁:タテ232mm×ヨコ287mm、ハードカバー
定価:3,600円+税
ISBN:4-309-900440-8
ブックデザイン=奥村靫正

テキスト=磯崎新「蜘蛛の戦略、あるいは記法の廃墟に」

都市風景の表現に新たな地平を切り拓くアーティストとして国際的にも注目される写真家金村修の本格的作品集。90年から99年までに撮影された写真の中から厳選して80点を収録。
見る者は、絶えず作られては壊されていく蜘蛛の巣のように張りめぐらされた都市の迷路に入り込み、眩惑され、方向感覚を失う。写真による日本の都市論でもある金村修の写真に啓発されて、建築家・磯崎新が本書のためにエッセイを執筆。装幀は、YMOの総合デザインプロデュースほか、様々なプロジェクトで活躍する奥村靫正が担当。

    「建物らしいものがみえる。だが建築と呼ぶにはあまりになげやりだ。
    都市の光景らしい。だが、本来都市を特徴づけた調和した景観なんてない。いわんや広場と呼ぶもののかけらもない。
    路地だろうか。しかし、懐かしい生活の雰囲気は消えている。
    ……
    金村修の写しとった路地や裏通りやガード下に、私はジャンク・ヤードのゴミの山と、震災の瓦礫の散乱をみてしまった。それは都市の排泄物、構築物の断片。いずれもが廃墟だ。とはいっても、日常的な既視感のあふれる場所であり、ほとんど放置されたあげくに忘却されている。ここでの特徴は、わずかの残余もない程に、ガラクタのような物品で、都市空間らしいものが蜘蛛の巣状に埋めつくされていることだ。パリにもニューヨークにも類似の場末はみいだせるかもしれない。だがこの断片的な光景こそが大都市(メトロポリス)という形骸をまとってはいても深層部において、既にメルトダウンを起こしている東京という街を代理表象しているとみえるのだ。」
    ――本書収録、磯崎新「蜘蛛の戦略、あるいは記法の廃墟に」より

金村修(かねむら・おさむ)略歴
1964年東京生まれ。写真家。東京綜合写真専門学校研究科在学中の92年にロッテルダム写真ビエンナーレに招かれて以後、国内外で個展、グループ展多数。96年には、ニューヨーク近代美術館写真部門より、世界の注目される写真家6人の一人に選ばれて展示。97年、日本写真家協会新人賞。2000年、史上2番目の若さで土門拳賞受賞。