遂に、生き物のように姿をあらわした、《極薄の書物(リーヴル・アンフラマンス)》の奇蹟、輝跡、軌跡、……。「映画」ではなく映画であり、「詩集」ではなくて詩集でもある。真にこの時代の証しである、《未開の庭》が出現した。
詩人・吉増剛造は、50年の詩作の涯に、その経験と思考と感性のすべてを投じた「言語とイメージの現在」への途方もない企てとして映像作品を制作、自らgozoCiné(ゴーゾーシネ)と名づけた。横田米軍基地に近い古井戸へ、松尾芭蕉が訪ねた松島へ、ブラジルの蟻塚へ、蓼科の水の枯れたプールへ、黄昏のエッフェル塔へ、カリフォルニアの荒野へ、中上健次の熊野へ、泉鏡花の金沢へ、島尾ミホを追悼して奄美へ……。これまでにも詩篇やエッセイで綴られてもきた場所や人物を再訪する詩人とともに、私たちは、新たな言語とイメージの交錯する領域に導かれていく。
[DVD]
2006年7月から2007年11月までに撮影されたgozoCiné(ゴーゾーシネ)19作品を収録(194分)。
まいまいず井戸――take I
まいまいず井戸――take II
Na entrada da casa dos fogos(花火の家の入口で)
千々に砕て――松島篇
プール平
エッフェル塔(黄昏)
クロードの庭
熊野、椰の葉、……
Goya――予告篇、吉田喜重氏に
柳田さんの宝貝、カリフォルニア
光の棘、Frank Lloyd Wright
Strasbourg、いけぶくろ
阿弥陀ヶ池、折口さん――
鏡花フィルムI ――プロローグ
鏡花フィルムII ――金沢篇
鏡花フィルムIII ――逗子篇
鏡花フィルムIV ――三尺角、水の駅
朔太郎フィルム日記
奄美フィルム――ミホさん追悼
[Book]
A5判変形/288頁/図版約50点
[序・全作品解題]
キセキノート/八角聡仁
[鼎談]
「遭難する魂、あるいはカメラをもったオルフェウスの宇宙」小林康夫+吉増剛造+八角聡仁
「幽霊の舞踏、あるいは世界の被膜をひきはがす力」朝吹真理子+吉増剛造+八角聡仁
「再訪の詩学、あるいはみずからのこころをもてなすこと」鵜飼哲+吉増剛造+八角聡仁
[gozoCiné19作品をめぐるエッセイ]
#1 まいまいず井戸――take I/「始原の眼窩へ降りてゆく詩人」今福龍太
#2 まいまいず井戸――take II/「〈神遊び〉で基地を透視する――または〈アメリカ〉への手紙」堀内正規
#3 Na entrada da casa dos fogos(花火の家の入口で)/「驚きの延長」與謝野文子
#4 千々に砕て――松島篇/「原風景に向かって逆流する時間」河合眞帆
#5 プール平/「『プール平』という経験」亀岡大助
#6 エッフェル塔(黄昏)/「覚醒を兆す街路」菊竹寛
#7 クロードの庭/「gozoCinéはどこへ行くのだろう」クロード・ムシャール(石橋正孝訳)
#8 熊野、椰の葉、....../「声が聞こえる」中上紀
#9 Goya――予告篇、吉田喜重氏に/「映画 生と死 あるいは詩のあわいに」吉田喜重
#10 柳田さんの宝貝、カリフォルニア/「生起する同時性、事件の現場」樋口良澄
#11 光の棘――Frank Lloyd Wright/「電気兎は海底の夢を見るか?」楠本亜紀
#12 Strasbourg、いけぶくろ/「Champagne! 」ジャン=フランソワ・ポーヴロス(石橋正孝訳)
#13 阿弥陀ヶ池、折口さん――/「結界をめぐる道行――水の都大阪」小泉恭子
#14 鏡花フィルム I ――プロローグ/「透明フィルムのたゆたい」郷原佳以
#15 鏡花フィルム II ――金沢篇/「河原者の行方」岡村民夫
#16 鏡花フィルム III ――逗子篇/「朝のアルゴー船――吉増剛造、泉鏡花、パゾリー二」土肥秀行
#17 鏡花フィルム IV ――三尺角、水の駅/「映画に脚が生えた」豊島重之
#18 朔太郎フィルム日記/「否完の映像」萩原朔美
#19 奄美フィルム――ミホさん追悼/「感覚の巡礼者、あるいはカメラをもったプシュケー」津田新吾
[評論]
リアル・タイム、または生=映画――gozoCiné覚書/倉石信乃
剛造の残響/パブロ・デュラン(石橋正孝訳)
記憶の蒼い下降調/今福龍太
[吉増剛造詩篇]
デリダ行
蝉
春の野の草摘み
poil = ポワル=毛、アフンルパル
赤馬、静かに(be quiet please)アメリカ
[付録]
作家自筆「Nakedwriting (Osorezan)」カラー複製
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