osiris

赤城修司『Fukushima Traces, 2011-2013』

取り扱い書店





3.11〈以後〉へのまなざし
福島市民が撮りつづける〈日常のなかの非日常〉


発売:2015年3月20日

総頁数:168ページ
写真:カラー 143点
体裁:A5判、ソフトカバー

定価:2,880円+税
ISBN:978-4-905254-05-8

写真・文:赤城修司
ブックデザイン:服部一成
翻訳:ダン・アビー


本書は、福島市在住の赤城修司が撮影した2011年3月12日から2013年6月22日に至る143点の写真を撮影日とコメントとともに収録している。

震災以前からTwitterを始めていた著者は、なんということもなく日々を呟いていたが、震災を機に(とりわけ原発事故を機に)徐々にツイート数は増え、ツイートされる写真も増えていった(@akagishuji)。福島第一原発から60キロ余り離れた福島市周辺の放射線による影響は、深刻な地域に比べれば少なかったとはいえ、事故後のさまざまな、かつて経験したことのなかった事象に対して、赤城は敏感に反応し、カメラを向けた。記録することが使命であるかのように、丹念に執拗なまでに撮影はなされ、その一部はTwitter上でコメントとともに公開されてきた。

公園に設置されたリアルタイム線量計、除染のために枝葉が切り落とされ幹が削り取られた街路樹、除染作業を告知する住宅地の看板、ブルーシートで覆われた汚染土……。赤城の写真は、その被写体のどれもが日常に侵入してきた「異物」であることにおいて共通している。Twitterにおける「異物」の公開は、一市民による、生活と切り離すことができない、やむにやまれぬ行為であった。そこでは、いい写真、面白くない写真といった、従来の判断基準を無効にする、写真のユニークな使用法が提示されているとも言える。

こうした震災以後の赤城のツイートは、多くのフォロワーを得るとともに、小説家の柳美里氏や美術評論家の椹木野衣氏ら広い分野の人々の注目するところとなった。さらにその活動はTwitter上に留まらず、2013年の椹木氏キュレーションによる「未来の体温」展への参加を皮切りに、展覧会における展示にも広がっている。(椹木氏による赤城修司についての論考は「未来の体温」展カタログ(発行=ARATANI URANO、山本現代、2013年)およびウェブマガジン『ART iT』における連載37回38回参照)。

『Fukushima Traces, 2011-2013』は、路上に亀裂が走る3.11翌日の写真で始まり、2013年半ば、福島市内の著者自宅庭先に敷地内の汚染土が埋められ、新しい土で整地された写真で終る。この約2年3ヵ月の間にツイートされた厖大な記録の一部を「本」という別の場に移行し、ほぼ日付順に構成した。

本書巻末のあとがき(「正しい伝達なんて存在しない」)で赤城は語る。「できるだけ自分の手の届く範囲の場所を記録したいと思っている。いかに世のメディアが、復興に沸く輝く街の姿でうめつくされていても、僕は足元の僅かな傷跡を記録しておきたいと思っている」。

赤城修司による痕跡(traces)の収集は、現在もなお続いている。


赤城修司(あかぎ・しゅうじ)
1967年、福島県生まれ。1989年、筑波大学芸術専門学群洋画コース卒業。青年海外協力隊員として1994年より2年間ブルガリアに滞在して美術教師として活動。 出品展覧会に、「未来の体温 after AZUMAYA」(山本現代、アラタニウラノ、2013年)、「Transmission」(畠山直哉との二人展、スタジオ35分、2014年)等。現在、福島市在住、高等学校美術教員。