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安村崇写真集『日常らしさ』

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発行:2005年9月30日

総頁数:92頁(写真点数=カラー36点、テキスト=16頁)
体裁:タテ243×ヨコ240mm、ハードカバー
定価:3,600円+税
ISBN:4-9901239-3-X
ブックデザイン:池田進吾(67)

テキスト(和英併記)
マーティン・ヤッキ「静かな表面のスキャンダル」
八角聡仁「モノノケの世界への友愛」
倉石信乃「実家、あるいは表象のステージ」

《日常らしさ》はキヤノン写真新世紀で1999年グランプリを受賞した作品シリーズです。安村は受賞時に「普段は日常に溶け込んでいて、とりたてて気にもとめない身の回りの光景。その光景を写真に置き換えていくと、その写真に「日常らしさ」が見当たらないことに気がつきました。まるで幻であったかのように消えているのです」とコメントを寄せています。日常のふとした歪みを写真を撮ることによって確認しようとするその姿勢は、後のシリーズ《自然をなぞる》《せめて惑星らしく》などにも受け継がれ、深化しています。世界の「裂け目」を露わにするそのユニークなまなざしは、安村の作家としての出発点でもあるこの《日常らしさ》に、すでにはっきりと読みとることができるでしょう。また、批評性を持つこの「裂け目」は非常に滑稽/キッチュであり、外国映画のインチキな日本の描写を見るかのように、思わず吹き出してしまう楽しさをあわせ持っています。

    安村崇の連作「日常らしさ」は、日常を構成する表層の亀裂に注目するかぎりにおいて、例えばルイス・キャロル的な「もの」側からの仕掛けられた反乱劇を想起させる。ただしそこには果敢な冒険者たるアリスが欠けている。それがために、奇妙な言い方だが「少しだけ巨大化」した、ラジカセ、エアコン、灰皿、鏡台、魔法瓶といった日用品、そうした「もの」こそが主役を演じている。──倉石信乃

安村崇(やすむら・たかし)略歴
1972 滋賀県生まれ
1995 日本大学芸術学部写真学科卒業
1999 第8回写真新世紀 1999年度グランプリ受賞
2005 パルコミュージアムにて「安村崇写真展」開催
2006 PHotoEspana(スペイン、マドリッド)に出品
2007 個展「Domestic Scandals」(Yossi Milo Gallery、NY)
2012 個展「1/1」(Misako & Rosen、東京)
2013 個展「楽園創造―芸術と日常の地平 Vol. 6 安村崇」(Gallery αM、東京)